今年に入って広域強盗事件や銀座宝石強盗事件など、お互いに面識のない若者が甘言や高額報酬に釣られて集められ犯罪を実行する、いわゆる「闇バイト」が問題視されています。
このような事件が報道され「闇バイト」という言葉が社会問題化しつつあるなかでも、むしろ「闇バイト」の種類や募集は、以前よりも増加傾向にあるとのことです。「闇バイト」が社会問題化しつつあり、多くの人がいけないと分かっていても、募集が増え、それに応じる人がなぜ減らないのか?どのようにすれば、このような「闇バイト」を断ち切ることができるのかを見ていきたいと思います。
闇バイトとは、どのようなものか?
闇バイトとは、甘言や高額報酬をうたい違法行為を実行させることを言います。強盗や詐欺の実行役(詐欺で直接金銭を受け取る「受け子」や詐欺で得たお金をATMから引き出す「出し子」など)、自分の名義貸し、指示で違法な物品を一時的に引き受けて渡すなどがあります。
強盗や詐欺などの実行役というのは、事件が起こると報道されるので分かりやすいですが、携帯の契約や口座開設に自分の名義を貸す、中身の分からない物品を一時的に引き受けるなどは、自分が犯罪行為に加担しているという感覚になりにくいので、特に注意が必要です。
名義貸しや、銃器・麻薬などの違法な物品の引き受けなど、自分が犯罪行為に加担しているという認識がなくても、罪に問われる可能性があるので、甘言や高額報酬に釣られても絶対に引き受けてはいけません。
近年は、インターネット上で募集をかけることが多く、不特定多数の人間をあまり経費をかけずに集めることができます。
こういう闇バイトの募集側は、強盗や詐欺などの実行役のそのほとんどが捕まることを見越して、募集し、実行させています。そこで奪った金銭の一部が手元に来ればよいと考えているので、それに応じる実行役は捨て駒であり、最初から報酬を払う気はさらさらありません。
それどころか、実行後は逮捕・取り調べ、裁判と、犯罪者として扱われることが待っており、社会的信用を失う、ネット上での書き込みによってその事実が半永久的に残るなど、人によっては犯した行為以上に一生苦しめられるかもしれません。
どのように勧誘され、なぜ応じるの?
では、募集に応じる側にとってデメリットだらけの「闇バイト」に応じる人がいて、なぜ減らないのでしょうか?
それは「闇バイト」を募集する側が、「誰でも〇〇するだけで、簡単に5万から10万円稼げます!」「日当15万以上!」などと甘い言葉で、誘いかけてくるからです。最近は物価高など生活が苦しい中、高額報酬をうたう募集は魅力的であり、「それで稼げるなら」と軽い気持ちで応じてしまうことが少なくありません。
インターネット上で「闇バイト」「高額アルバイト」と検索すると簡単に出てきますし、中には「高額アルバイトだが、闇バイトではない!」とあえていっているものもあります。
その多くが、応募者が高額な日当や報酬に釣られて、自分から募集側に連絡をすることが多いのですが、最近ではSNSやダイレクトメッセージなどを使い、募集側からスマホなどを通じて直接連絡が来ることもあるようです。
そして連絡してしまうと、その気があると判断されその場で「案件の紹介や手順」「仕事に必要な身分確認」と称して、免許証や保険証の送付などの指示が来ます。そこでおかしいと思って断っても後日しつこく連絡が来たり、他の闇バイトの紹介の連絡がしつこく来ることになりかねません。
ある番組で闇バイトの募集にスタッフが応じたら、担当者と称する人物が隠語を使って「叩き(強盗などのこと)は捕まるリスクが少しあるが、報酬が高い」などと、あたかもローリスク・ハイリターンであるかのように語っていたのを覚えています。
しかし、警視庁の統計によると強盗の検挙率は99.3%だとのことなので、この甘言は嘘であり、ハイリスク・ノーリターン、ほぼ確実に捕まるというこです。
そして、もし闇バイトに応じて途中で辞めたくなっても、免許証や保険証などから住所が把握されているので、「辞めたらお前自身や家族に危害を加える」と脅され、抜け出すことが困難になります。
なかには住所などがなくても応募ができ、通信アプリのテレグラムで犯罪であることを告げられた上で、「それでも大丈夫です」と特殊詐欺の受け子に応じた20代の若者もいます。彼によると、「割がいい気がして何となく」そのアカウントに連絡したとのことです。
ただ逮捕され、拘置所に入ってから社会的信用を失うという事の重大さに気づき、「人生を棒に振ってしまった」と後悔したようです。
その報酬が通常のアルバイトの相場とかけ離れていないか?
では、どうしたら「闇バイト」に応じず犯罪に加担することを回避できるのでしょうか? それはまず「高額報酬のアルバイト」と称するものが、他のアルバイトの時給や日給の相場とかけ離れていないか確認することです。
反対に「スーパーやコンビニのアルバイト」など、通常のアルバイトとはあまりにも相場がかけ離れていれば、犯罪行為に加担させるためと疑っていいでしょう。
また「闇バイト」に限りませんが、「すぐに稼げる!」「楽に稼げる!」「○○するだけ!」といった甘い言葉が、一言でも出てきたら危険な案件です! 耳に心地がいい「割がいい」と思える案件こそ疑いましょう。
月並みですが、「世の中、楽して稼げるアルバイト・仕事はない!」と頭に入れておきましょう。
このアルバイトが「闇バイト」かどうか、自分で判断できない場合は、そのサイトや募集側には絶対に連絡せず、親や友人など身近な人に相談してみるとよいでしょう。身近な人でなくとも以下のような相談機関もあります。
警視庁 #BAN 闇バイト
全ての人が加害者にも被害者にもなりうる
広域強盗や銀座宝石強盗など、捕まった実行役が10代~20代ということで、「闇バイト」は若者が手を染めてしまうイメージがありますが、「闇バイト」の種類の多さを見れば分かる通り、40代・50代あるいは高齢者の方でも、「困っている人がいるから名義を貸してほしい」などと犯罪行為に加担させられる恐れがあります。
「闇バイトは、ネット上のみで起きていて自分には関係ないこと」などと考えていると、いつの間にか加害者にも被害者にもなってしまう恐れがあると認識しておくべきでしょう。
そもそも、「闇バイト」はアルバイトではなく、ただの犯罪行為であり「闇バイト」という誤った言葉の使い方が「少しくらいなら大丈夫」という認識に至らせてしまうのかもしれません。
私が昔、小学生だった時に「薬物使用がどれほど心身をボロボロにするのか」という啓発活動で、薬物中毒の治療に当たった医師の話や、歯がボロボロになった薬物使用者の写真を見せられ、怖くなり今でも「薬物使用はいけない!」という気持ちが強く残っています。
このように、記憶に残りやすい小学生から高校生くらいまでの間に、学校内での「闇バイト」啓発活動や、社会人を対象に警察などの公的機関が中心となって啓発活動を行うなど、社会全体で撲滅していく必要があるでしょう。
「闇バイト」は、アルバイトではなく、ただただ犯罪行為に加担することであり、その後の自分の人生を大きく狂わせ、ネットでの書き込みなど、一生そのことで苦しめられる可能性が高いと。
このような認識が社会的に広く共有され、その募集に応じる人が激減すれば、「闇バイト」の撲滅につながっていくのではないでしょうか。
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