前社長による性被害の訴えに対する、ジャニーズ事務所の現社長・藤島ジュリー景子氏の対応、知人女性への性的暴行の疑いで書類送検された西部山川穂高をめぐる西武ライオンズの対応、関東大震災における朝鮮人虐殺にたいする現国会の答弁。
これらは時代背景や、問題の形態がまったく異なる性質の出来事ですが、この3事例からは、ある共通の問題が見えてきます。
事実関係を調べない、調べる気がない
まず、元ジャニーズタレントがジャニー喜多川氏による性被害があったことを訴えている問題について、藤島ジュリー社長は動画と文書で謝罪しましたが、その事実関係については「当事者であるジャニー喜多川に確認できない」とし、喜多川氏の疑惑については「一切知らなかった」と述べています。
これは性加害について謝罪したのではなく、性加害を訴えた人が出たことによって世間が騒ぎ、その大騒動のなかで事務所や関係者に迷惑がかかったことを謝罪したように見えます。
また、知人女性に対する性的暴行の疑いで書類送検された山川穂高選手の所属球団である西部ライオンズは、今月12日に山川の1軍出場選手登録を抹消しましたが、その理由が「総合的に判断してコンディション的に抹消した」とのことで、性的暴行の疑いについては触れていません。
あくまで性的暴行の疑いが理由ではなく、コンディションが不調だから登録抹消したということのようです。
さらに、問題の時代背景はだいぶ異なりますが、1923年の関東大震災のさいに起きた朝鮮人虐殺に関して、今月23日の参議院内閣委員会で、杉尾議員が谷浩一・国家公安委員長に、震災時における中国・朝鮮人虐殺事件における警察など公権力の関与を調査するよう求めましたが、谷委員長は「政府が調査したところでは事実関係を把握する記録は見つからなかった」と答えました。
杉尾議員が再度、「日本政府の中央防災会議報告書がある」「国立国会図書館にも日本の有識者たちが書いた文書がある」と追及しましたが、谷委員長は「記録を見つけることはできない」という答弁を繰り返すばかりでした。
これでは杉尾議員が指摘した資料を、政府が本当に調査したのか、虐殺に対する公権力の関与はあったのか、なかったのか判然としません。
この3つの事例には、ある2つの共通点が存在します。
まず1つ目は、事実関係を調べない、調べようとしないで問題の事実認定を避け、世間の関心を押さえる。あるいは関心の高まりや批判が沈静化するまで待って、事をやり過ごそうとすることです。
2つ目は、事実認定を避けつつ、とりあえず謝罪や反省を口にして、世間には「何かを謝っている」という印象を持たせることです。何に対して謝罪や反省をしているのか分からず、実際には謝罪や反省をしているわけではないのですが。
世間が忘れるのを待っている
ある時期から政治の世界で常套手段になりつつある、問題をウヤムヤにして世間が忘れるのを待つという手法を、芸能界や球団の一部を含め、他の社会組織が真似し始めたということでしょう。
この悪しき習慣、恥ずべき問題解決法(問題解決になっていないのですが)は、結局、世間がそれで許してしまうから、無くなるどころか増殖してしまうのかもしれません。
このような対応ではダメという流れをつくる
このように、問題の事実認定を避けて謝罪や反省を口にする行為は、少なくとも公の場では謝罪したと社会が認めないことでしょう。
ただ言い訳をしたに過ぎず、事実関係を明らかにしない謝罪は、謝罪ではないと社会で共有することです。
まず事実関係をどのように調べたのか経過報告をし、もし事実関係が調べられないのであれば、第三者による調査を依頼して、その結果をもとに事実認定を報告し謝罪しなければ、謝罪したり反省しているということにはなりません。
こういう本来の真っ当対応、ごくごく普通の問題解決法を社会が「ちゃんと謝罪した、反省している」と認めれば、こういう悪しき対応は、自然とその姿を消していくことでしょう。
コメント