54年前の今日、1969年7月20日はアメリカの宇宙飛行船「アポロ11号」が、人を乗せた宇宙船としては世界初の月面着陸を成功させた日です。
同年の7月16日にアメリカのフロリダ州にあるケネディ宇宙センターから、高さ110mという史上最大の大きさを誇る「サターンV」ロケットによって打ち上げられ、7月20日に月面に着陸しました。
サターンVロケット
引用元:https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=187236
そして、ニール・アームストロング船長(1930年~2012年)とバズ・オルドリン操縦士(1930年~)が人類史上初めて地球以外の他の天体である月に降り立ちます。
今回は、その月面着陸に至る背景についてまとめてみました。
冷戦下の熾烈な宇宙開発競争
第2次世界大戦後、アメリカとソ連(現ロシア)は、資本主義陣営と社会主義陣営のリーダーとしてあらゆる分野で競争を繰り広げていました。
冷戦とは「冷たい戦争」というように、直接戦火を交えずに、戦争のように激しい競争を繰り広げたことから、そう呼ばれています。
この冷戦で、新たな競争分野としてロケット開発をはじめとする宇宙での競争が始まりました。
当初から人工衛星の打ち上げ、有人宇宙飛行、船外に飛行士が出て活動する宇宙遊泳など、いずれもソ連が世界初を達成して、アメリカはその後塵を拝していました。
1960年代までに有人月面着陸を実現させる
政治的に失ったプライドを取り戻すため、1961年に時のアメリカ大統領であるケネディが演説で「1960年代が終わるまでに人間を月に着陸させ、無事地球に帰還させる」と宣言し、アポロ計画がスタートします。
1960年代の終わりまでに月に有人飛行することを宣言したケネディ。
(1961年5月25日)
引用元:NASA – Great Images in NASA Description,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6452829
この計画には、総額250億ドルという当時の日本の年間予算をはるかに超える巨額の費用がつぎ込まれ、ロケット開発や宇宙船などの開発が進められていきました。
アポロ計画は、ピーク時には40万人の従業員に加え、2万以上の企業や大学がサポートしていたと言われています。
人類初の月面着陸
1969年7月20日、アポロ11号月着陸船によって2人の宇宙飛行士が月面に降り立ちます。
凶弾に倒れ、すでにこの世を去っていたケネディが宣言した「1960年代までに人間を月に着陸させる」という約束を、1960年代の終わりギリギリに達成しました。
人類として最初に月面に降り立ったアームストロング船長は、「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」という、その後またたく間に有名になるメッセージを地球に送っています。
月面に立てた星条旗に敬礼するオルドリン
引用元:NASA / Neil A. Armstrong – Apollo 11 Image Library (image link), https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=137926
その後、アポロ計画は1972年のアポロ17号まで続けられ、初号機のアポロ1号による地上訓練中の火災事故と13号を除いては月面着陸に成功しましたが、巨額の予算を使って人間を月に送る必要性が失われたとみなされ、当初の20号までの計画を待たず中止に至ります。
冷戦下での競争が、有人月着陸を実現させた
日本で宇宙開発というと、科学技術の発展や宇宙の成り立ちを解明するというロマンが先行しますが、有人月面着陸を実現させたアポロ計画は、冷戦下でのソ連との激しい宇宙開発競争により、結果的に月面着陸という偉業を成し遂げたと言えるでしょう。
もちろん、この月面着陸によって培われたロケット技術やその関連技術の発展、飛行士の思い、その後の天文学への大いなる貢献は疑いようのない事実です。
模型による月面着陸の再現
しかし、「1969年当時に月面着陸ができたのなら、なぜ今できないのか?」という陰謀論を聞くと、「予算を含めたエネルギーが当時の冷戦時代と異なるのだ!」という背景を知らないからこそ、簡単に言えてしまう言説だと実感します。
おそらく当時よりも少ない予算でも実現できるのでしょうが、それでも簡単ではないということは、今年の4月に日本のベンチャー企業が民間初の無人月着陸を試みるも失敗したことからも分かります。
やはり月面着陸は簡単ではなく、ましてや有人での着陸となると、それなりの予算と準備期間が必要なのでしょう。
こういった現実を知りつつ、それでも月に降り立つ、あるいは月や他の天体に思いをはせるというロマンは捨て難いものがあります。
この現実とロマンのギャップを埋めることができた時、誰もが宇宙や月面に行ける日が来るのでしょうか。
う~ん、難しいですね。でも、ぜひ実現してほしいものです。
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